令和乙女日記

拗らせメンヘラの端書き

先手を打つ

先日すっぽかしてしまった美容院から連絡が来た。今回はキャンセル料は無しでいいらしい。4月に東京に越してから、月一のペースで通い続けているから常連サービスなんだろうなと想像できるものの、とても優しいなと感動せずにはいられない。なんだかここ数日、世界の優しさに触れることが多い。

休みがちだった高校時代に身につけた能力は、知識よりもコミュニケーション能力だったと思う。まず高3の4月に担当教員へ挨拶回り。これは高2の担任と立てた作戦だった。とにかく先回りして、自分が休みがちな問題生徒であることを教員に伝えて多少心証を良くした。さらに、休んだらその分のプリントを貰いに行ったり、課題が出せなかった時には代わりにできることはないか尋ねに行ったり、たまに登校できた日の昼休みや放課後は、主に担当教員探しに充てられていた。うちの高校は、職員室にほとんどの教員がいるものの、中には体育科教員室や、図書館や、生徒指導室にいる教員もいて、教員巡りは一筋縄では行かなかった。というか、登校するのに膨大なエネルギーが必要だから不登校気味なのであって、貴重な休み時間をそういった活動に充てなければならないのはとても厳しいことだった。
だけど頑張ったおかげで、自分に圧倒的に非がある時に、逃げずにとにかく食らいつける能力が身についた。教員だって人間なのだから、同じ不登校気味の生徒でも、自分から謝罪に来る生徒は少し助ける気が湧くし、反対に何も言いに来ない生徒は生意気だなと感じられてしまう。先手を打つということは、とても重要なスキルだ。
今回の美容院もそれはあるだろうなと思う。先手を打って、キャンセル料は次回お支払いしますと伝えておいたのだ。それが無ければ、もしかするとキャンセル料を支払うよう連絡が来たかもしれない。人間とはかくも単純な生き物だ。
もちろん、先手を打ったところで優しい対応を受けられないこともある。というか、そっちが正しくあるべきだと思う。コミュニケーションをしっかりとることは、あくまで相手からの印象を少しでも良くする方法であって、優遇されるための方法では無いのだから。だからこそ、優しい対応を実際にしてもらえることはとても有り難い。世界はわたしが思っているほど怖いところでは無いのかもしれないと思えて、少しだけ安心する。