令和乙女日記

拗らせメンヘラの端書き

不幸の虫

容態がひどく悪くなってしまいました。けれど、暗い闇の中を進んでいるわけではないのです。カーテンは開け放たれていて白い光が部屋を包み込みます。BABY,THE STARS SHINE BRIGHTの桃色の長袖ブラウスとMAJESTIC LEGONの焦茶色のギンガムチェックのスカートを身に纏ったわたくしは、冷房の効いた部屋で心地好く過ごしています。
どうやら躁鬱の気が強まっているようで、気分はコロコロと変わります。でも基本的には頭は静か。凪いだ海のよう。ああ、こんなことを書いていたら海へ行きたくなってきました。実際にはお外は真夏で暑いし、どのビーチも下品な人達で溢れかえっているでしょうに。

失恋を致しました。いえ、解っていたのです。ずっと前から。ただ受け入れられなかっただけ。自分の利益をずっとずっと優先してしまっていただけ。わたくしはようやく、貴方にとってわたくしがなんでもない存在、どうでも良い存在であるということを受け入れられました。貴方のことをなるべく考えない生活にはまだあまり慣れませんが、じきに慣れていくのでしょう。これまでもそうでしたから。
けれど、貴方はあまりにも、わたくしの理想の王子様に近すぎました。これ以上の方は本当にもう現れないのではないでしょうか。貴方を大切にできなかったわたくしには、天涯孤独という罰が当たるのではないでしょうか。そんな気がするのです。

わたくしが苦しめば苦しむほど貴方の苦しみが減るような、そんな仕組みが備わっていればいいのにと夢想します。ですが、繋がっているわけでもないわたくしと貴方の間にそんな仕組みが存在する筈もなく、こんなものはただの現実逃避でしかありません。
貴方がよく言っていたように、わたくしはただの女のコです。特別でもなんでもありません。どこにでもいます。わたくしには不幸の虫が付きまとっていますが、こんな虫は絶滅危惧種でもレッドリストに載っている訳でもないのです。そこらじゅうにいる、なんでもない虫なのです。

だけどわたくしは、この不幸の虫を追い払おうと決意するのが少し遅すぎたようです。ずっと空想の世界に逃げて、虫の羽音を幸福が近づいてくる足音だと勘違いしていました。なんて間抜けなんでしょうね。あら、わたくしったら、誰に語りかけているのでしょうか。
もう何にもわかりません。生きていたい気持ちはあるけれど、頑張るのはもう嫌です。疲れてしまいました。どうか貴方だけは、貴方へのこのささやかな想いだけは守りたいと今は願っておりますが、わたくしはまた変わってしまうのでしょうか。
自分がどんどん手に負えなくなっていくのが恐い。自分でも、明日のわたくしが、未来のわたくしが何を仕出かしているのか想像がつかないのです。わたくしは一体どうすれば良いのでしょうか。お医者様から処方していただいたお薬だけはきちんと飲んでいます。けれど、それだけで良いのでしょうか。落ち着かなくなったらodに走ってしまうこともありますし、これではお薬の効果を消してしまっているのではないでしょうか。
もう何もわかりません。だけどどうか、わたくしが誰かを傷つける怪物になってしまうことだけは、大切な貴方との綺麗な思い出を踏みにじってしまう怪物へと成り果ててしまうことだけはありませんようにと祈ります。もしも神さまがいて、まだわたくしのことを見捨てずにいてくださるのならば、どうかこのお祈りを聞いてください。