永い永い眠りに就いていました。目が覚めて息を吸ってようやく、今まで自分が仮死状態にあったのだと気がついた。それはまるで茨の生い茂るお城で王子さまを待ち続けるお姫さまのようだとも思うけれど、私は決してそんな綺麗なものではない。仮死状態にあってもこの体は生に貪欲で、お薬を大量に飲んで頭をおかしくしてみたり、真夜中にわざと暗い道を選んで出かけてみたり、そんなことを繰り返していました。この魂は穢れていることでしょう。
ロッキンホース・バレリーナの革紐を足首に巻き付けながら、
「今までありがとうね」
と私は呟く。
クローゼットを開けてフリル満載のお洋服たちに触れてみて、同じことを口にする。
仮死状態の私を支配してくれたのはロッキンホース・バレリーナ、貴方だったわ。
優しく包み込んでくれたのは色とりどりのお洋服たち。
みんながいなければ、わたしはもっと穢れていた。薬で肝臓と脳みそを壊して、数多の男性に体を許して、感情を切り売りして、魂を穢すことでしか生きていく道を見つけられなかったでしょう。美しいものたちが私の魂を少しは守ってくれていた。
お友達なんて役に立たないわ。彼女たちはロッキンホース・バレリーナのようにわたしに道を示してくれるわけではないし、お洋服のようにいつも支えてはくれない。
「お洋服は裏切らないものね」
といつかお友達の誰かが口にしたけれど、貴方に何が分かるのと今では思う。
ねえ、小説らしいものを書いてみようと思ったのに気づけば心内文ばかり書き連ねていますね。感情ばかりが動いて、実際に体が動くことはほとんどなくて、まるで私の暮らしみたい。
お城を包む茨は、実はお姫さまが張り巡らせたものなのではないでしょうか。仮死状態はあまりに危うくて、運命の王子さま以外の侵入を許してしまったら、お姫さまは強姦されてしまうかもしれない。そんなのだめ。絶対に私を助けてくれる貴方が茨を打ち破って来てくれるまでは、私は固く身を守るのです。1人でしんしんと眠るのです。