令和乙女日記

拗らせメンヘラの端書き

パンクな着替え

ふいに小学生の頃を思い出した。あれは4年生くらいだったか。それまでは体育の着替えは教室で男女ごったに行なっていたのを、ある学年から教室にカーテンの仕切りが生まれるようになり、女子はその中、男子は外で着替えるように変化した。今思えば、最初は男女混ぜこぜで着替えていたのかとそちらの方が恐ろしく感じるものだが……。カーテンで教室が仕切られるようになってしばらく、わたしは反逆の姿勢を取っていたことがあるのだ。つまり、カーテンの中に移動することをせず、これまで通り自分の席で黙々と着替えていた。

思えば、小学生時代のわたしにはそういうところがあった。頑固というか、とりあえず周囲に合わせておくという処世術を知らない純粋さ。いじめられたのもその辺りが理由だろうなと今となっては思う。

仕切りを無視して着替えると男子から罵詈雑言を浴びせられた。見るなよとか、変態とか、そんな内容だった気がする。そうそう、思い出したけど、わたしは自分の席がカーテンの中に入ったならそのまま中で着替えていたのだ。要は「自分の席で着替える」というそれまでの慣習を、急に性差を意識し始めた謎の新ルールによって崩されることに反発していたのだ。新ルールに従うことでどこか高揚しているクラスメイトにも嫌気が差していた。こいつらは今背伸びしている。自分たちが「児童」から「男性・女性」へと成長していることに喜びながらもそれを決して表に出そうとはしない、ただ滲み出てしまってはいる、その子どもっぽさが見苦しくて、自分もそこに迎合しようとは思えなかった。実際、あの場でカーテンの意味を正確に理解していた者はごく僅かだっただろう。意味もわからないのになんとなく大人の世界みたいだから、分かったふりをしてルールに従うその空っぽさが許せなかった。だからわたしは戦ったのだ。

思えばなんてパンクなエピソードなのだろうと思う。これぞ、体制に反発する思想。しかもそれを小学生でやっているのである。もちろん、男子の裸が見たかったからとかそんな理由は露とも無い。むしろ、わたしは周りを見ないようにしながら着替えていた。嗚呼なんと不器用で美しい在りし日のわたし。当時のわたしに密かに憧れていた子がいたかもしれないなとふと思った。いや、あんな学校にそんな美しい感性の児童はいないか。