令和乙女日記

拗らせメンヘラの端書き

予約票紛失事件

今月の初めに、一通の電話がかかってきました。

胸を高鳴らせながら留守電を再生すると、それは大好きなブランドからの、待ちに待っていたお洋服が入荷したというお知らせでございました。

電話の主はわたくしが密かに気に入っている店員さん。声がとてもかわいくてふわふわしていて、それでいて頻繁にお店番をしていたり、オンラインショップのモデルをしていることからかなりのやり手であることが伺える、かっこよさとかわいさのメーターがどちらも振り切れた女性。

このメゾンから電話がかかってくることは初めてではなくて、連絡先も登録してある。だけど今回入荷したアイテムは一際特別でございました。

BABY,THE STARS SHINE BRIGHTのエリザベスシリーズのブラウスとボンネット、カラーはエンジ。それが今回のアイテム。

エリザベスシリーズはBABYの中でも特に人気の高いシリーズで、アイテムを予約するのにまず抽選をクリアする必要があります。わたくしは昨年の7月にこの抽選に見事当選したのですが、ちょうど全部嫌になって自殺未遂をしでかした時期と重なって、入金の期限を過ぎてしまったのです。だけど生き延びてしまったのなら抽選を潜り抜けて手にした権利を捨てたくはないと、全てが恐ろしいぼろぼろの状態でお店に連絡をして、まだ入金が許されるか確認。

ダメ元だったのだけど有難いことに許されて、おめかしをして母親を引き連れて即刻入金に向かいました。この時期はまだ母親と行動を共にしていたくらい、ほんとうにわたくしは厳重警戒の対象だったのです。

そんな経緯のあったこのアイテムですが、電話を頂いてから引き換えに必要な予約票を探してみると、これが無い。どれだけ探しても見つからず、怯えながらお店に連絡すると、身分証があれば今回は引き換えることが可能だけれど以降この店舗で予約やお取り寄せをお願いすることはできなくなると。

わたくしは大好きなメゾンの気高さに痺れながらも、自分がお店のブラックリストに載ってしまうことを考えて震えました。そりゃあ東京にあるBABYの店舗はここだけでは無いし、オンラインショップだってあるのだからこの先もお買い物はできるけれどそれでも後ろめたいものがあるのは耐えられない。

普段なら諦めてしまっていたでしょうが、わたくしは懸命に家中を探し続け、念の為母親にも持っていないか確認してもらうようお願いしました。

そして先程、ようやく予約票が見つかったのです。ほんとうに良かった。誤って捨ててしまったのかと考え始めた折のことでした。

あったのは母親がまだ定期的にこの家に来ていた頃、まとめていた書類の中。他のレシートと共に紛れ込んでいました。わたくしは家の中にこんな書類の束があることすら知らず、電話越しに母親からこの場所を聞いたことで発見できたのです。

発見の喜びを母親と分かち合いつつ、なぜ紛れ込んだのかなどを話していたら、ふと母親から『貴方が悪い』という趣旨の発言が零れ落ちました。

それには一瞬疑問を抱きました。だってこの書類の束を作り上げたのは母親なのですから。

ですが会話の流れを追ってみると、他の箇所で彼女は幾度も自分のせいだと発言していました。ゆるく謝る中でふいに零れ落ちたのが、レシートに紛れるような折りたたみ方をしたわたくしの責任だというこの発言。

これを聞いてわたくしはむしろ、この人は今回の件に非常に負い目を感じているのだろうなと感じました。そしてそれは嬉しいこと。わたくしにとって大きかったこの問題の大きさを母親も共有してくれていたのです。

予約した商品は無事受け取れるとしても、その後この店舗でお取引をお願いできなくなることのショックを理解してくれていた。それは温かいことでした。

商品は来週辺りに取りに行くつもりです。本当に本当に、無事見付かってよかった。この思い出を受けてブラウスとボンネットはさらに特別なものとなるでしょう。嗚呼、これだからお洋服愛好はやめられない。